ラン菌。
好気性菌のラン菌を説明するのに、ヘチマたわしが非常に良いことに気付いた。
瓢箪つくりも同じである。

ヘチマの果実が熟しはじめる頃もぎ取って「水に浸ける」。
このとき、果実の表面には夥しい嫌気性菌の植物酵母菌、腐敗細菌が生息している。
空気のあるところでは、この菌達は大繁殖出来ない。
しかし、酸素の少ない水の中では・・・水を得た魚のように・・・・大繁殖出来る。
ヘチマの果実は、養分が豊富だから、水の中で嫌気性が大繁殖し、
ヘチマの果肉、種子の周囲の肉は、30日ほどで腐敗され、ドロドロになる。
しかし、この半熟した果肉の中には、果実の形を作っている強靭なセルロース、リグニンで出来た繊維がある。
これがヘチマたわしになるのであるが、
この繊維を嫌気性菌はエサにして分解できない。
分解する能力がない!
見事にこの繊維だけが残る!
ドロドロに腐敗した果肉をキレイに洗い落とせば・・・・白いヘチマたわしが出来上がる。
瓢箪作りも同じである。
瓢箪は繊維でなくセルロース、リグニンで出来た緻密な殻が果実の表皮の下に形成される。
表皮と種子周囲の果肉を嫌気性菌で腐敗させれば、この固い殻のみが残る。

このヘチマの果実、瓢箪の果実を水の中ではなく、地上に放置すればどうなる????
最初果実は時間はかかるが徐々に植物酵母菌などが繁殖し腐敗する。
果実は腐るのである!
リンゴでもバナナでもメロンでも・・・・。
その後、材木腐朽菌が食べ残されたヘチマの繊維、瓢箪の固い殻を・・・・・
朽ちらしてゆく・・・・。
この材木腐朽菌は腐敗させるのではなく・・・・あくまでも朽ちらすのである。
そして、約1年後には・・・全て分解され、地上には何も残らないようになる。

このヘチマの果実と瓢箪の果実を、そのまま水に浸けて置いたらどうなる????
嫌気性菌はヘチマの繊維、瓢箪の殻のセルロース、リグニンを分解できないので、
何年も水中にたわし繊維と殻が残ることになる。

なぜこのことを書くかといえば、
ラン栽培で使われる水ゴケ、バーク、ヤシ繊維、ヘゴなどには養分が少ないから、
嫌気性菌が短時間に分解できないから使用してきた。
ヘチマのたわしになる繊維と同じ理屈である。
瓢箪の殻がランに使用されなかった。
それは多孔質でなかったので、水、空気を保存できなかったからである!
ニュージランドバーク。
ヘチマたわしと同じである。
樹皮の形成層には養分が多量に含むから、これを嫌気性菌に食べさせ、
残りのセルロース、リグニン部分を水洗いして粒子を仕分けして製品にしている。
これは1000年も昔の遺跡から木材の柱、船の板などが出てくるのと同じである。
木材を朽ちらす好気性菌の材木腐朽菌は、土中深く、水中では酸素不足で繁殖出来ないため、
1000年も残って来たのである。
朽ちると腐るでは、関係する菌は、全然異なるということである。
家庭ゴミを腐らすには・・・色々EM菌はじめ多くあるが、全部嫌気性菌である!
ランはこの嫌気性菌をラン菌としなかった!
ここに植物生態系の多様性があるのである。
ランの生態系。
これをこれまで書いた本はない。
生物多様性の本は多くでているが、「植物生態系の多様性」の本は、研究論文は極めて少ない!
熱帯雨林のラン科植物の生態系。
温帯のラン科植物の生態系。
寒帯のラン科植物の生態系。
全てラン菌と枯れ落ち葉の生態系が構築されている。
光合成のみではラン科植物の栄養を説明できない。
この生態系の多様性は近年新しく生まれた視点で、最先端の学問になりつつある。
植物分類学。
土壌学。
森林学。
農学。
農芸化学。
菌茸学。
気象学。
そういう全てを抱合して・・・植物の全貌に迫るという視点である。
この講座は、初歩の初歩の入り口を書いているが、
植物の生態の多様性は、地球上の環境条件が複雑で、そこに適応した生態系が、
個々の植物に構築されているので、宇宙にも似た世界があり、
今後、どのように解明されてゆくのか・・・・。
この講座では、この中からラン菌に焦点を絞り書いている。
松の根には500種以上の内生菌が生息しており、この菌達のネットワークが構築されている。
一つの菌の働きをいくら研究しても、殆ど無意味なのである。
これまでは、一つの菌を研究してきたが、殆ど意味をなさなかった!


ラン菌は好気性菌の材木腐朽菌。
嫌気性菌で分解できないセルロース、リグニンを分解できる菌である!
これを分解したとき、低分子の糖、糖質が出来る!
ランはこの糖、糖質を栄養源と狙った植物である。
光合成での敗者が、この僅かな糖をエネルギーにして生き延びたのである。
大飢饉。
東北地方に江戸時代・・・冷害で大飢饉になったとき、生き延びるために・・・・
赤松の樹皮の形成層を食べた!
現在でも山形県遊佐町の道の駅では「松皮モチ」を販売している。
人間の胃液、胃に棲む嫌気性菌に、この松皮形成層を分解する能力があるか知らないが、
消化できないから「満腹感」があると言うこともある。
ランも人間も・・・・飢えには勝てないのである。
一揆も革命も・・・飢えによる場合がいかに多いか。
自由、平等、博愛のフランス革命も・・・・最初は一個のパンからである。


ランの自生地には必ず「枯れ葉」がある!
最低限のパンがある!
だからこそ、誰も肥料を与えないでも・・・・何百万年もいき続けて来られたのである。
ラン栽培のキメテは「枯れ葉」なのである。
ここに生きるラン菌なのである!
ヘチマたわし、瓢箪を作る菌
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